当社は、製造業のお客様十数社分のWebサイトの月次レポートを、AI(Claude Code)を使って作成しています。ただし、「AIに全部任せて自動で送る」仕組みではありません。むしろ逆で、以前は動かしていた自動配信を2026年5月にやめ、人が確認してから送る形に戻しました。
この記事では、月次レポートや報告書をAIで作成する仕組みを、当社の実際の工程をもとに紹介します。製造業の会社でも、月次の生産報告や品質報告、営業報告など、毎月くり返す報告書づくりに同じ考え方が使えます。どこをAIに任せ、どこを任せないかの線引きを中心にお伝えします。
月次レポートの作成は、AIによる自動化に向いている
報告書づくりは、AIに任せやすい業務の条件がそろっています。毎月くり返す。手順が決まっている。元になるデータがある。間違えても、送る前の確認で直せる。業務の向き・不向きの考え方は製造業の業務自動化はAIでどこまでできるか|3つの段階にまとめています。
一方で、報告書はお客様や経営者の判断に使われる書類です。数字が1つ間違っているだけで、報告全体の信用を失います。ですから、仕組みづくりの中心は「どう速く作るか」ではなく、「間違いをどこで止めるか」になります。
当社の月次レポート作成の6つの工程と、AIの分担
| 工程 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 1. データの取得 | アクセス解析(GA4)と検索データ(Search Console)から、対象月の数値を会社ごとに取り出す | 決まったプログラム(AIには任せない) |
| 2. 過去の振り返り | 直近3か月分の分析の記録を読み、先月の課題がどうなったかを確かめる | AI |
| 3. 分析文の作成 | 当月の総括、数値の変化の解釈、課題と改善案を文章にする | AI(下書き) |
| 4. 資料の生成 | グラフ入りの資料を作り、PDFにする | 決まったプログラム |
| 5. 全件の検証 | ページ数、グラフの抜け、社名の一致、ほかの会社の情報の混入を機械的に点検する | 決まったプログラム+人の目 |
| 6. 確認と送付 | 内容を確かめ、お客様へ送る | 人 |
ポイントは、AIに任せているのが2と3、つまり「読んで、考えて、文章にする」部分だけだということです。数値を取り出す作業と、資料の形にする作業は、毎回同じ結果になる決まったプログラムに任せています。
失敗から決めた、報告書をAIで作るときの3つのルール
ルール1:数値の取り出しは、AIにやらせない
当初は、データの取得もAIに任せていました。ところが、複数の会社の作業を並行して進めたときに、AIの利用量が大きくふくらみ、会社ごとのデータが混ざるおそれがあることも分かりました。そこで、数値の取り出しは決まったプログラムで先に一括して行い、結果を会社ごとに完全に分けたフォルダに保存する形に改めました。AIは、保存された数値を読むだけです。
AIは文章を作るのは得意ですが、「毎回まったく同じ手順で、同じ数値を取り出す」ことは、ふつうのプログラムのほうが確実です。得意なことだけを任せるのが、報告書づくりの基本です。
ルール2:取り違えの点検を、必ず全件で行う
複数の宛先に似た形式の報告書を送る場合、いちばん怖いのは取り違えです。A社のレポートにB社の数字や社名が入る事故は、1回でも起きれば信用に関わります。当社では、資料ができたあとに、ページ数、グラフの枚数、分析文の社名、ほかの会社のドメインが混ざっていないかを、全件で機械的に点検しています。
実際にこの点検で、グラフがすべて抜けた資料を送付前に見つけたことがあります。表紙の社名は、最後に人の目でも確かめます。社内の報告書でも、部署名や製品名、対象の月の取り違えは起こりえます。点検の項目を決めて、毎回同じように確かめる仕組みにしておくことをおすすめします。
ルール3:送るのは、人が確認してから
当社は以前、決まった日時に自動でレポートを送る仕組みを動かしていましたが、2026年5月に廃止しました。いまは、作成までをAIと決まったプログラムで進め、内容を人が確かめてから送付しています。
メールの送信は取り消せません。取り消せない操作の前には、人の確認を置く。これは、AIに業務を任せるときの共通の線引きです。作成の手間が減った分を、確認に回すという考え方です。
AIの分析文を「それらしい一般論」にしないための工夫
AIに数値だけを渡して分析文を書かせると、「アクセスが増加しました。引き続き改善に取り組みましょう」のような、どの会社にも当てはまる文章になりがちです。当社では、次の2つを決めています。
- 過去3か月分の分析の記録を読ませる:先月の課題が改善したか、悪くなり続けている数字はどれかという、時間の流れの中での評価ができるようになります
- 書き方の決まりを渡す:数値は具体的に書く。「PVが伸びました」ではなく、「どのページが、先月と比べてどれだけ伸び、どの施策の効果と考えられるか」まで書く。課題には重要度を付ける
毎月の分析の記録を残しておくことが、翌月のAIの分析の質を上げます。報告書をAIで作る仕組みは、記録を積み上げる仕組みでもあります。こうした決まりをAIに覚えさせる方法は、製造業の社内ルールをAIに覚えさせる|CLAUDE.mdの書き方で紹介しています。
それでも、AIの文章には事実の取り違えがまぎれることがあります。当社では、レポートに課題として書く内容について、URLと記事名が合っているか、「未実施」と書く前に実施の記録がないかを、送付前に照合する決まりにしています。
製造業の報告書に当てはめると
| 報告書の例 | 決まったプログラム・既存システムに任せる部分 | AIに任せる部分 | 人が行う部分 |
|---|---|---|---|
| 月次の生産・品質報告 | 生産数、不良数、稼働時間の集計 | 前月・前年との比較の文章、変化が大きい項目の指摘 | 原因の判断、対策の決定 |
| 営業の月次報告 | 受注額、見積件数、引き合い件数の集計 | 傾向の要約、先月の課題の振り返り | 来月の方針の決定 |
| 取引先への定期報告 | 納期の達成率、検査結果の集計 | 報告文の下書き | 内容の確認と送付 |
集計は、すでにあるシステムやExcelに任せます。AIには、集計の結果を読んで文章にするところを任せます。数字にどんな情報が含まれるかによって、AIに渡してよいかの確認も必要です。考え方はAIに売上や顧客情報を入れていい?情報の種類別の判断表をご覧ください。
よくある質問
Q. プログラムを書ける人がいなくても、この仕組みは作れますか?
最初の一歩は、プログラムなしで始められます。いつものExcelの集計結果をAIに渡し、報告文の下書きを作らせるだけでも、文章を考える時間は減ります。集計や資料づくりまで仕組みにしたい場合は、Claude Codeのような道具を使うと、プログラムの経験がなくても少しずつ作れます。導入の様子は製造業の社長がClaude Codeを使い始めた|導入の実際で紹介しています。
Q. AIが書いた分析は、信用できますか?
下書きとして信用し、確認してから使う、という距離感をおすすめします。数値そのものはAIに作らせず、決まった集計の結果を読ませる。解釈は、現場を知っている人が確かめる。この分担なら、AIの間違いが報告書にそのまま残ることを防げます。
まとめ:報告書のAI自動化は、「任せない部分」を決めることから
月次レポートや報告書の作成は、AIによる自動化に向いた業務です。ただし、数値の取り出しは決まったプログラムに、読んで文章にする部分はAIに、取り違えの点検は全件で、送付は人が確認してから。当社が失敗から決めたこの分担が、速さと信用を両立させる形でした。まずは、いつもの集計結果から報告文の下書きを作らせるところから試してみてください。
当社では、製造業のお客様向けに、報告書づくりをはじめとする業務の自動化をAI活用支援として行っています。当社が作成している月次レポートは、Webマーケティング支援の中でお届けしているものです。お問い合わせはこちらから。
当社がAIで業務を回している仕組み(フォルダ設計とテンプレ一式)は、noteで公開しています(有料)。