COLUMN

製造業のAI活用事例|見積・図面・日報・技術継承の実例

INSIGHTS & TIPS

「AIを使ってみたが、何に使えば仕事が楽になるのか分からない」。製造業のお客様から、よく聞く声です。実際には、見積・図面・日報・技術継承といった、どの工場にもある業務で、AIを仕事の流れに組み込み始めている会社が出てきています。

この記事では、社名を出して公開されている製造業の事例(公的機関や業界メディアの記事で確認できたもの)と、当社が実際にAIで回している業務の例を、4つの業務ごとに紹介します。あわせて、業務ごとに「AIに任せること」と「人が確かめること」の線引きもまとめました。

AIが効くのは「毎回同じ手順で、書類と記録が多い仕事」

事例を見ていくと、AIがうまく働いている業務には共通点があります。

  • 手順が毎回ほぼ同じ:注文書の確認、日報の集計、報告書の作成など
  • 探す・写す・まとめるが多い:過去の見積や図面を探す、手書きを打ち直す、記録を整えて報告書にする
  • 最後に人が確かめられる:AIの出した下書きやチェック結果を、担当者が見て直せる

逆に、判断の根拠を説明できない仕事や、間違えたときに取り返しがつかない仕事を、いきなりAIに任せている事例はほとんどありません。「下書きと下調べはAI、決めるのは人」という分担が基本です。

見積・受発注:注文書の照合と、見積書の下書きをAIに

三重県伊賀市のジャバラ(蛇腹)メーカー、株式会社ナベル(従業員199名)は、年間約2万件ある受注で、お客様の注文書と社内の受注チェックリストを突き合わせる作業に、AIを取り入れました。AIが1次チェックを行い、人は画面上で怪しいところを重点的に確認する分担です。3名で行っていた作業が1名体制になり、作業時間も約半分になったといいます(出典:山陽新聞デジタル掲載のプレスリリース、2026年4月27日。AIツールの提供会社の発表で、同社の担当者が実名でコメントしています)。

ポイントは、AIに「合否」を決めさせるのではなく、人が見るべき箇所を絞り込ませていることです。見落としが許されない照合作業ほど、この分担が効きます。

当社でも、見積書や請求書の作成をAIに任せています。会計ソフトの見積書の機能とAI(Claude Code)をつなぎ、「〇〇社の見積書を作って」と頼むと、過去の見積と契約の条件を読んで下書きを作ります。金額と品目の最終確認は代表が行い、確認が済んでから送ります。

図面:過去の類似図面と、見積の履歴を探す

スパークプラグなどで知られる日本特殊陶業は、図面のPDFをアップロードすると、形の似た過去の図面を探し出すシステムを作りました。これまでは引き合いのたびに人手で探しており、ベテランでも探し漏れの心配があり、新人は探すのに大変な時間がかかっていたそうです。検索結果には、過去の設計や見積の対応履歴もひも付けて表示されます。試験導入の段階で「Top 5 再現率で 80% 以上の検索精度」を記録したと公表されています(出典:Google Cloud 公式ブログ、2025年7月2日)。

大手の事例ですが、「似た図面を探して、そのときの見積を見たい」はどの工場にもある場面です。まずは過去の図面と見積を、同じ場所・同じ名前のルールで整理しておくことが、将来AIに探させる準備になります。

図面をAIに読ませるときに気になるのが、情報の漏れです。AIのサービスごとに、入力した内容を学習に使うかどうかの設定が違います。社内でルールを決めてから始めてください(図面をAIに入れたら学習される?製造業の情報漏洩対策)。

日報・報告書:記録をまとめて、毎日届ける

自動車部品メーカーの旭鉄工は、工場の全200ラインから集めているデータを、毎朝AIが分析して社内チャット(Slack)に共有しています。社長の著書や取り組みを読み込ませた「AIキムテツ」や、部長全員分のGPTも作り、現場の改善のアイデア出しに使っているそうです(出典:キーマンズネット、2025年11月14日、同社の木村哲也社長の講演より)。

社員十数名の食品・健康食品の製造業である株式会社SAKUのグループ会社は、ExcelとFAXと紙の書類が中心で、IT担当者もいない会社です。AI(Claude Code)専用のパソコンを1台用意して社内チャットにつなぎ、各自がスマホやPCから指示を出せるようにしています。日報などの報告書、議事録、メールの下書き、仕訳や棚卸の不備チェックに使っているそうです(出典:株式会社SAKU「Claude Code 社内導入ガイド」)。

当社のお客様(溶接・板金業)では、現場の手書き日報を事務の方がシステムに打ち直していた作業を、AIに読み取らせて工数管理のシステムへ登録する仕組みに切り替えています。仕組みと始め方は手書き日報をAIで自動入力|Claude Code×工数管理APIで詳しく書いています。

技術継承:ベテランの手順を、読める・見られる形に

石川県金沢市の岡田研磨株式会社(建設機械や産業機械向け部品の加工・組立)では、前職がIT企業の営業で、プログラミングの経験がない専務が、2023年末から生成AIとの対話を重ねて業務のアプリを自作しました。最初に取り組んだのは検査成績書のシステム化です(出典:J-Net21(中小企業基盤整備機構)、2025年7月31日)。

いまでは約30種類以上のアプリをまとめた社内システムで、検査実績・品質報告・在庫・生産進捗などを一元管理し、月5,000〜6,000枚分のペーパーレス化と、月530時間程度の労働時間の削減につながっています。技術継承の面で注目したいのは、AIを使った手順書の仕組みです。誰でも手順書を作れるようにしたところ、それまで150件程度だった手順書が、わずか4か月で240件ほど増えたそうです(出典:中小企業白書2026 事例2-2-14、中小企業庁)。

岐阜県海津市の田中工業(1960年創業、従業員17名、金属部品加工)では、従業員の半数以上が65歳を超えています。取締役がChatGPTやClaude Codeなどを使い分けて、作業手順を動画にした多言語対応のマニュアル、製品表面の傷を見つけるアプリ、受注から請求までをまとめて管理する仕組みを自作しています(出典:ビジネス+IT、2026年6月8日)。

当社では、作業の手順を業務ごとの「手順書」に書き、AIが作業のたびにそれを読んでから動くようにしています。一度作業を頼んだあと「今の手順を手順書にまとめて」と頼めば、AIが下書きを作ってくれます。失敗したことは「よくある失敗」として書き足すので、同じ失敗が起きなくなります。人に仕事を引き継ぐときも、同じ手順書がそのまま使えます。

業務別「AIに任せること・人が確かめること」

業務AIに任せること人が確かめること
見積・受発注注文書と受注内容の突き合わせ(1次チェック)/過去の見積を探す/見積書の下書きAIが示した怪しい箇所/金額と納期
図面類似図面の検索/過去の設計・見積の履歴を探す/読み取った情報の一覧化探した図面が本当に同じ仕様か/客先に返す内容
日報・報告書手書きの読み取りとシステムへの登録/データからの分析と共有/報告書の下書き読み取りの誤り/数字の整合
技術継承手順を手順書・マニュアル・動画に整理/新人の質問への一次回答手順の正しさ/安全に関わる内容

事例に共通する始め方

  1. 業務を1つに絞る:岡田研磨の最初の題材は検査成績書でした。毎週・毎月くり返す業務から始める
  2. AIに渡してよい情報を決める:図面・顧客情報・単価の扱いを、始める前に社内で決める
  3. 最後の確認を人に残す:ナベルのように、AIは1次チェック、人が2次チェック。送信・提出・登録の前に担当者が必ず見る
  4. やり方を書き残す:うまくいった手順を手順書にし、次から同じように動かす

よくある質問

Q. IT担当者がいなくても始められますか?

始められます。この記事で紹介した岡田研磨では、プログラミングの経験がない専務がAIと対話しながらアプリを作り、SAKUのグループ会社にはIT担当者がいません。最初は、日報の集計や注文書の確認など1つの業務に絞り、使いながら広げていくのが近道です。

Q. ChatGPTとClaude Codeのどちらを使えばいいですか?

文章の作成や相談が中心なら、どちらのチャット型AIでも十分です。ファイルの整理や、会計ソフト・工数管理などのシステムへの登録まで任せたい場合は、パソコンの中の作業ができるClaude Codeのような道具が向いています。田中工業のように、目的に合わせて使い分けている会社もあります(製造業の社長がClaude Codeを使い始めた|導入の実際)。

まとめ:まず1つの業務で「下書きはAI、確認は人」を回す

製造業のAI活用は、特別な設備や専門の人材がなくても、見積・図面・日報・技術継承といった毎日の業務から始められます。うまくいっている会社に共通するのは、業務を1つに絞り、AIには下書きと下調べを任せ、最後の確認を人に残していることです。

当社では、製造業のお客様向けに、AIの導入から社内への定着までをAI活用支援として行っています。「うちのどの業務から始めればいいか」という段階のご相談も歓迎です。お問い合わせはこちらから。

Claude Codeの記事は、始め方から業務での使い方までClaude Code 活用ガイドにまとめています。

関連コラム

FAQ

よくある質問

A

はい、ご安心ください。基礎から丁寧にご説明し、実際にAIツールを触りながら学べるハンズオン形式で進めます。ITリテラシーに関わらず、どなたでもご参加いただけます。

A

ChatGPT、Claude、Geminiなどの主要な生成AIツールに加え、画像生成AI(nanobanana等)や動画生成AI(veo3等)も扱います。御社の業務に最適なツールをご提案します。

A

はい。製造業AI定着プログラムには、終了後6ヶ月間のチャットフォローが付いています。また、AIアドオン・伴走支援では、実務での活用に課題が出た際のご相談や、新しいAIツールの情報提供も継続的に行います。

A

研修ではビジネス向けプラン(データが学習に使用されない設定)のツールを使用します。また、機密情報の取り扱いルール策定もセミナー内でお伝えしますので、安心してご利用いただけます。

A

Webセミナー(オンライン開催)の場合、交通費はかかりません。会場開催・訪問実施の場合は、交通費を実費で別途申し受けます。遠方の企業さまもまずはご相談ください。