「AIが便利らしいのは知っている。でも、うちみたいな町工場には関係ないんじゃないか」——製造業の経営者の方から、こうした声をよく聞きます。
結論から言えば、AIはすでに製造業の現場で使われ始めています。大企業だけの話ではありません。従業員10名以下の加工会社でも、メールの返信、協力会社探し、加工手順書の作成などにAIを活用している事例が出てきています。
この記事では、AIをまったく触ったことがない方を対象に、「そもそもAIって何なのか」「製造業ではどう使えるのか」「どうやって始めればいいのか」を、専門用語なしで解説します。難しい話は一切しません。
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そもそも「生成AI」とは何か — 5分でわかる基本

最近よく聞く「ChatGPT」「Claude」「Gemini」。これらは「生成AI(せいせいエーアイ)」と呼ばれるツールです。
生成AIとは、人間が文章で指示を出すと、それに応じた文章や画像を作ってくれるソフトウェアのことです。工場のロボットアームとは別のものです。パソコンやスマホのブラウザから使えるので、特別な設備は必要ありません。
イメージとしては、「何でも知っている、文章が上手い、24時間対応の秘書」が一番近いかもしれません。質問すれば答えを返し、「こういうメールを書いて」と言えば文面を作ってくれます。
代表的な生成AIサービス
現在、主に使われている生成AIは以下の3つです。いずれも無料プランがあり、すぐに試せます。
| サービス名 | 開発元 | 特徴 | 無料プラン |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | OpenAI(米国) | 利用者数が最も多い。情報量が豊富 | あり |
| Claude | Anthropic(米国) | 日本語の文章が自然。長文の読み書きが得意 | あり |
| Gemini | Google検索との連携。画像生成も可能 | あり |
どれを使っても基本的な機能は同じです。まずはどれか1つを触ってみてください。日本語でやり取りする場面が多い場合は、自然な日本語を生成できるClaudeがおすすめです。前回のChatGPT・Claude・Geminiの比較記事で各サービスの違いを詳しく解説していますので、気になる方はそちらもご覧ください。
製造業で実際に使われている場面

「AIって具体的に何に使えるの?」という質問が一番多いので、実際に製造業の現場で使われている場面を紹介します。
まず押さえたい基本の使い方
- メールの文面作成 — 取引先への返信、見積もり依頼への回答、お礼メールなど。「こういう状況で、こういう相手に送るメールを書いて」と伝えれば、丁寧な文面を作ってくれます
- 調べもの・情報収集 — 「○○加工と△△加工の違いを教えて」「RoHS指令の最新動向は?」など。検索エンジンで何ページも読む代わりに、要点をまとめてくれます
- 協力会社・加工先の検索 — 「千葉県で精密切削加工に対応できる会社を探して」といった条件で候補を出してくれます
- ホームページやブログの記事作成 — 自社の技術や製品を紹介する文章の下書きを作ってくれます
一歩進んだ使い方をする人も出てきている
基本的な使い方に慣れた方の中には、さらに実務に即した活用をしている方も増えています。
- 加工データの作成 — 加工条件の整理や、データのフォーマット変換などをAIに手伝ってもらう
- 加工手順書の作成 — 作業手順をAIに整理してもらい、新人教育用のマニュアルに活用する
- 画像の作成(意匠) — AIの画像生成機能を使って、製品イメージやプレゼン資料用のビジュアルを作る
こうした使い方は特別な知識がなくても、AIの基本的な操作に慣れれば十分にできることです。最初からこのレベルを目指す必要はありません。まずは基本から始めましょう。
まずはメールの返信から始めてみよう

AIを使い始めるなら、メールの返信が最適な練習台です。
「メールの返信くらいAIを使うまでもないよ」と思う方もいるかもしれません。それはもっともです。メールの返信は、AI活用の初歩の初歩だからです。
ただ、ここで大事なのは「メールの内容を作ること」ではなく、「AIにどう指示を出せば、求めている回答が返ってくるか」を体感することです。AIはもっと難しいことにも活用できます。メールの返信は、いわば初級の練習です。
また、メールを書くとき「この言い回しで失礼にならないかな?」と検索エンジンで調べた経験がある方もいるのではないでしょうか。そういう方にとっては、AIにメールの返信文を考えてもらうだけでも意外と時間の節約になります。
実際にやってみよう — メール返信の具体例
たとえば、取引先から「見積もりの件で相談したい」とメールが来たとします。AIへの指示の出し方を、良くない例と良い例で比較してみましょう。
良くない指示の例
AIへの指示(プロンプト)
見積もりの相談メールに返信して。
これだと、AIは状況がわからないので、ありきたりな返信しか作れません。
良い指示の例
AIへの指示(プロンプト)
以下の条件でメールの返信文を作ってください。
【相手の情報】
・株式会社△△の購買部の田中さん
・初めてのお取引。展示会で名刺交換した
・SUS304の切削加工の見積もりを依頼してきている【当社の情報】
・○○製作所。精密切削加工が専門
・SUS304の加工実績は豊富【伝えたいこと】
・見積もり対応可能。図面を送ってほしい
・納期は図面確認後に回答する
・丁寧だが堅すぎないトーンで
このように、「相手がどういう人か」「こちらがどういう会社か」「何を伝えたいか」をできるだけ具体的に書くと、AIは的確な文面を作ってくれます。出力された文面に間違いや不足があれば、「ここを修正して」と追加で指示すれば調整できます。
AIへの指示(プロンプト)の基本 — 3つのポイント

AIに良い回答を出してもらうには、「良い指示」を出す必要があります。これを「プロンプト」と呼びます。
プロンプトと言うと難しく聞こえますが、要は「AIに何をしてほしいか、できるだけ具体的に伝える」ということです。人間の部下や外注先に依頼するときと同じで、前提情報が多いほど良い仕事が返ってきます。
ポイント1: 前提条件を伝える
「自分は誰で、どういう状況なのか」をまず伝えます。
例
私は従業員15名の金属加工会社の社長です。ホームページのリニューアルを検討しています。
これだけで、AIは「中小製造業の経営者向け」の視点で回答を組み立ててくれます。
ポイント2: 目的と求める成果物を明確にする
「何のために」「どんな形で」欲しいのかを伝えます。
例
ホームページ制作会社を比較するための表を作ってください。比較項目は「費用」「製造業の実績」「サポート体制」「SEO対応」の4つで、3社分の枠を用意してください。
ポイント3: トーンや条件を指定する
「どんな雰囲気で」「どのくらいの長さで」といった条件も指定できます。
例
取引先に送るメールなので、丁寧だけど堅すぎないトーンでお願いします。300文字以内で。
この3つのポイントは、メールに限らず、調べものでも資料作成でも共通です。いきなり難しいことにAIを使おうとせず、メールの返信など身近なタスクで「どういう指示を出せば、求めている回答が返ってくるか」を繰り返し練習するのがおすすめです。
メールの返信に慣れたら、次はこの使い方

プロンプトの基本を押さえれば、すぐにステップアップできます。製造業の経営者にとって特に役立つ2つの使い方を紹介します。
競合調査
同業他社のホームページを見て「うちと何が違うのか」を分析するのは時間がかかる作業です。AIを使えば、この作業を大幅に効率化できます。
プロンプト例
以下の3社のホームページを比較して、それぞれの強み・特徴・ターゲット顧客を表にまとめてください。
・A社: https://〜
・B社: https://〜
・C社: https://〜当社は○○加工が専門です。当社との差別化ポイントも教えてください。
※ AIサービスによってはURLの内容を直接読めない場合があります。その場合はホームページの文章をコピーして貼り付ければ同様の分析が可能です。
協力会社(加工先)探し
「この加工ができる会社を探したい」という場面は製造業では頻繁にあります。検索エンジンで1社ずつ調べる代わりに、AIに条件を伝えて候補を出してもらう方法が広がっています。
プロンプト例
以下の条件に合う加工会社を探しています。候補を5社程度、会社名・所在地・対応可能な加工内容とともに教えてください。
・加工内容: アルミの精密切削加工
・所在地: 関東圏
・ロット: 小ロット(10〜50個)対応可能
・品質: ISO9001取得が望ましい
AIが出す情報は必ずしも最新・正確とは限らないため、候補が出たらホームページで確認するなどの裏取りは必要です。とはいえ、ゼロから検索するよりも格段に効率的です。
AIを使う前に知っておきたい注意点

AIは便利なツールですが、万能ではありません。使い始める前に、以下の3点は知っておいてください。
1. 機密情報の入力に注意する
AIに入力した情報は、サービスの学習データとして使われる可能性があります。図面の詳細情報、取引先の機密情報、未公開の技術情報などは入力しないようにしましょう。各サービスの設定で「学習に使わない」オプションがある場合は、それをオンにしておくことをおすすめします。
2. AIの回答を鵜呑みにしない
AIは「もっともらしいが間違った情報」を生成することがあります。これを「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。特に、具体的な数値・法規制・会社情報などは必ず自分で確認してください。AIの回答はあくまで「下書き」や「たたき台」として使うのが正しい付き合い方です。
3. 最初から完璧を求めない
AIへの指示は、1回で完璧な回答が返ってくることのほうが少ないです。「ここをもう少し詳しく」「トーンを変えて」「箇条書きにして」など、何度かやり取りしながら求める回答に近づけていくのが基本です。人間同士のコミュニケーションと同じで、やり取りを重ねるほど精度が上がります。
まとめ — まずは触ってみることが一番の近道

この記事のポイントをまとめます。
- 生成AIは「文章が上手い24時間対応の秘書」。パソコンやスマホから無料で使える
- 製造業でもすでに活用されている。メール作成、調べもの、協力会社探しなど身近な場面から
- まずはメールの返信から練習。「相手の情報」「自社の情報」「伝えたいこと」をAIに伝えることで、指示の出し方(プロンプト)に慣れる
- 基本を押さえれば、競合調査や協力会社探しにもすぐ活用できる
AIについて本やセミナーで勉強するのも良いですが、実は一番の近道は「とりあえず触ってみること」です。無料で使えるので、まずは今日届いたメールへの返信をAIに手伝ってもらうところから始めてみてください。
主要な生成AIサービス(すべて無料で始められます)
| サービス名 | URL | おすすめポイント |
|---|---|---|
| Claude | https://claude.ai/ | 日本語の自然さが強み。長い文章の読み書きが得意 |
| ChatGPT | https://chat.openai.com/ | 利用者最多。対応範囲が広い |
| Gemini | https://gemini.google.com/ | Google連携。画像生成にも対応 |
どのサービスもメールアドレスの登録だけで無料で使い始められます。まずは1つ選んで、試してみてください。
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